干物にアニサキスなど寄生虫の心配はないの?ポイントは冷凍と加熱

干物にアニサキスなど寄生虫の心配はないの?ポイントは冷凍と加熱

干物にアニサキスの心配はない?

「イテテテテッ…」

食事の後、突如腹痛に見舞われた経験はありませんか?
大抵は食べすぎや消化不良による一時的な軽い症状で治まると思いますが、中には嘔吐や下痢といった腹痛だけにとどまらない症状が現れることもあります。

そんなとき、疑うのは食中毒。
その原因の多くは細菌やウイルスです。
生卵やレバ刺しで有名なサルモネラ菌、カレーやシチューなど鍋料理で注意が必要なウェルシュ菌、重症化すると死に至る危険もある腸管出血性大腸菌(O157やO1111)、冬季の食中毒として有名なノロウイルスなどその種類は多岐にわたります。

ところで、アニサキスという名前は聞いたことがありますか?
アニサキスは魚介類に寄生する寄生虫(線虫)の一種です。

食中毒の原因としてアニサキスをはじめとする寄生虫もそのひとつとして挙げられます。

数年前にタレントの方がアニサキスによる食中毒になったことをSNSにアップし、それがニュースなどでも大きく取り上げられたため、認知度は急上昇したと言われています。

アニサキスを生きている状態で人が体内に取り込んでしまうと、胃壁や腸壁に突き刺さり、それにより激しい腹痛を引き起こします。
これを急性胃(腸)アニサキス症と呼びます。
主に魚介類を生で食べた場合に発症する可能性があるアニサキス症ですが、干物の場合はどうなのでしょうか。
当店で取り扱っているのどぐろの干物などを例に、

  • 干物にアニサキスの心配はあるのか?
  • アニサキスだけじゃない?魚介類に住み着く他の寄生虫とは
  • 寄生虫による食中毒を予防するポイント

などを解説しておりますので、ぜひ参考にしてみてください。

※当記事では実際の寄生虫の写真・画像は一切使用しておりませんので、見た目が苦手な方でも安心してお読みいただけます。

夏季には細菌による食中毒が、冬季にはウイルスによる食中毒が起こりやすいと言われています。

この記事を書いた人

株式会社 和田珍味
和田珍味は大正12年創業のふぐ・のどぐろ等をはじめとする水産加工品メーカーです。
本店は島根県大田市の世界遺産石見銀山から車で15分。
和田珍味オンラインショップはこちら

和田珍味のお試しセットバナー

【結論】干物に関してはアニサキス等による食中毒の心配はほぼ無い!

干物は食中毒の心配がない

まず結論ですが、
干物はアニサキスによる食中毒の危険はほぼありません!

それはなぜなのか、詳しく見ていきましょう。

なぜ干物は食中毒の心配が無いのか?

アニサキス予防の2大ポイントは冷凍と加熱です。
そして、干物に関しては以下のようにこの2大ポイントをしっかりと抑えています。

  • ネット通販で購入できる干物は冷凍保存が基本
  • 干物は加熱調理が前提

アニサキスは「マイナス20℃以下で24時間以上冷凍」また「60℃以上で1分以上加熱」することで死滅することが分かっています。
一方、酢や塩での漬け込み処理、わさびや生姜での解毒は効果がないことも分かっています。

和田珍味の予防策

さらに当店では「加熱・冷凍」以外にもアニサキス予防にとって大事な「鮮度・目視確認」にもこだわっています。
一般的にアニサキスは生きている魚の内臓に寄生しています。
ところが、魚が死亡して時間が経過し鮮度が落ちると、アニサキスは筋肉に移動するのです。
つまり鮮度が高いうちに内蔵を取り除いてしまうことが予防のためには非常に大切になってきます。

当店和田珍味では島根沖や山口下関などで獲れた新鮮な国内産の魚のみを使用して商品販売をおこなっております。
そして、工場では魚を知り尽くしたスタッフが新鮮なうちに一枚一枚丁寧に内蔵を取り除き仕上げており、お客様に新鮮かつ安全に食べていただけるよう加工後は急速冷凍をしています。


当店で大人気の「のどぐろ一夜干」の製造過程について、以下のレシピ記事でも詳しく解説しておりますので、よければご覧ください。

のどぐろレシピ「のどぐろ一夜干」を使った和風おにぎり

のどぐろに住み着く可能性がある寄生虫とは

のどぐろに住み着く可能性がある寄生虫とは

アニサキスの他にも魚介類にはさまざまな寄生虫が住み着いてる可能性があります。
釣りを趣味としている方などはよく知っているかもしれません。

当店でも取り扱うのどぐろに関しては、ウオノエという寄生虫が有名です。
アニサキスのように小さく見つけるのが大変な寄生虫ではなく、体長はおよそ2cm-5cmと大きく、口の中に寄生していることが多いので、見逃してしまうことはほぼありません。
ちなみに、広く言えば、カニやエビなど甲殻類の一種だということです。

見方によってはかわいい顔をしている寄生虫なので、気になった方は検索してみてください。
中には食べる方もいるようで、調べるとレシピなど多数出てきます。(美味しいようです)

参考:ウオノエの世界  ~カワイイ顔して、魚に寄生する甲殻類

アニサキスによる食中毒が起こりやすい時期は?

アニサキスによる食中毒が起こりやすい時期は?

厚生労働省が公表している過去数年の月別のアニサキス食中毒の発生状況があります。
春先や秋口が多くなっているなど、月ごとの傾向は多少あるようですが、年間通して気をつけるべき食中毒だということがわかります。

アニサキス食中毒発生状況(患者数)
引用:アニサキスによる食中毒を予防しましょう(厚生労働省)

1つ注意しなければいけないのは、こちらで報告されている患者数は医療機関を受診してアニサキスによる食中毒だと判明した場合のみの数字だということです。

痛みや症状に個人差があり受診しない場合もありますし、そのときの状態や医療機関での判断でアニサキス症を疑わない場合もあるでしょう。
そのため、実際のアニサキスによる食中毒はこの報告以上にあると言われています。

アニサキス症と呼ばれる食中毒の症状は?

アニサキス症と呼ばれる食中毒の症状は?

アニサキスが人間の体内に入った場合、主に胃壁か腸壁に刺さることによって食中毒が引き起こされます。

急性胃アニサキス症の場合

原因となる魚介類を食べた数時間後〜十数時間後に、激しい腹痛、悪心、嘔吐などの症状が現れる。

急性腸アニサキス症の場合

原因となる魚介類を食べた十数時間後〜数日後に、激しい下腹部痛などの症状が現れる。

発生数で言うと、やはり腸より胃が手前にあるためか、胃アニサキス症が大半のようです。

アニサキスに対するアレルギーも報告されている

実は近年、上記のアニサキス症だけではなく、アレルギーによる症状も報告されています。
腹痛、吐き気などアニサキス症と同様の症状が現れることもありますが、アレルギーの場合はさらに湿疹、呼吸困難、かゆみ、じんましんなどアレルギーで起こりやすい症状も現れると言われています。

難しいところは、魚アレルギーとの区別がつきにくいところです。魚に含まれるたんぱく質が原因の魚アレルギーは一般にもよく知られています。
魚を食べたらアレルギー症状が出たので医療機関で検査してもらったら、魚に対するアレルギー数値がそれほど高くなかった。たまたまだったのかな。と決めつけてしまうと危ないかもしれません。
実は魚に寄生しているアニサキスの成分がアレルギー反応を引き起こしていた可能性があるのです。

アナフィラキシーショックが起きれば重篤な状態になりかねませんので、魚を食べてアレルギー症状が出た場合はすみやかに医療機関を受診しましょう。
そして魚アレルギーなのか、アニサキスによるアレルギーなのか、また原因はそこじゃないのか、判断がつけば今後の対策ができます。

ちなみに、アニサキスアレルギーに関しては、アニサキスの成分が魚に残っている状態であれば、加熱や冷凍といった予防策はあまり効果はありません。
干物はアニサキス症の心配はほぼないと言って良いですが、アレルギーに関しては可能性があります。ご注意ください。

参考:アニサキス・アレルギー、意外に知らないカラクリ「アニサキス症とは別物」、発作抑える魚の選び方

食中毒を防ぐ予防法

食中毒を防ぐ予防法

アニサキスによる食中毒に対する予防策はどんなものなのか、見ていきましょう。
細菌やウイルスによる食中毒の予防とも共通する部分が多いので、参考にしてみてください。

鮮度

まず大切なのは鮮度です。
水揚げ後、どれだけはやく内蔵を取り除けるか、そして魚の保管状態は大切なポイントです。
消費者が市場で魚を丸ごと購入するなどの際は、新鮮かどうか見極める力と購入後はすみやかに内蔵を取り除くこと、そして当然ながら内蔵を生で食べないことが効果的な対策です。

人間の目による確認

下準備段階でできる対策は目視確認です。
内蔵を取り除いたあとも完全には安心できません。筋肉部分にアニサキスが移動してしまっている可能性はあります。
非常に小さく色も半透明や白濁色なので、見つけるのは大変ですが、目視での確認は徹底しましょう。

加熱・冷凍

たとえ魚の体内にアニサキスが残っていたとしても、冷凍と加熱を行えばアニサキスは死滅します。
-20℃で24時間以上の冷凍処理、そして70℃以上(60℃の場合は1分以上)での加熱処理がポイントです。
死滅したアニサキスを食べてもアニサキス症は起こりません。ただし、前述したようにアレルギー症状には念の為お気をつけください。

養殖かどうか

魚選びのときに有効な予防策の1つとして、「養殖ものを選ぶ」があります。
養殖された魚はエサが冷凍・乾燥されていたり、育つ場所が限定されていたりして、アニサキスが入り込む可能性がとても低くなります。(ゼロではありません)
養殖可能な魚の種類は決して多くはないのですが、お子さまに食べさせる時など念には念を入れ予防したいという場合は、養殖ものを選ぶと良いでしょう。

万が一食中毒の症状が出た場合の対処法

万が一食中毒の症状が出た場合の対処法

ここまで見てきた通りアニサキス対策には、なによりも予防が大切です。
ただ実際には提供者を信じて出されたお刺身など生鮮魚介類を食べることはよくあることです。
ここでは、食後に腹痛や吐き気などの症状が現れた場合の対応と治療法を確認します。

まずは医療機関の受診を第一に考えてください。
立ったり歩けたりするなど、自力で受診できる場合は、家族や友人に付き添ってもらい消化器科など胃カメラでの検査ができる医療機関を受診するのが望ましいです。
また、呼吸困難をはじめ重篤なアレルギー症状が出た場合は、救急車を呼ぶことも考えてください。

アニサキス症に関して言えば、たとえ医療機関を受診せずとも数日でアニサキスが突き刺さった胃壁や腸壁から抜け落ち死滅するため、徐々に痛みは治まっていくと言われています。
ただし、他の食中毒また食中毒以外の病気の可能性も十分に考えられるため、やはり医療機関の受診は第一に考えてください。

医療機関を受診の際には、「いつ・どこで・何を」食べたのか説明できるようにしておきましょう。
特に魚介類の種類によって寄生虫を判別できることもあるので、どこで獲れたものなのか、冷凍はされていたのかなどにも気を配るといいでしょう。

アニサキス症が疑われる場合の検査は胃内視鏡検査(胃カメラ検査)で行われることがほとんどのようです。実際に胃の中を見てアニサキスの存在が確認できれば、その場で付属装置でアニサキスの除去を行います。うまく除去できればすみやかに痛みは治まるとのことです。
また、アニサキスが深く入り込みその姿が確認できない場合、もしくはなんらかの事情で胃カメラ検査ができない場合は、保存療法となるようです。この場合は痛み止めなどを服用しつつ、自然とアニサキスが抜け落ちるのを待つことになります。

まとめ

  1. 干物に関してはアニサキス食中毒の心配はほぼありません
  2. 有効な予防策は、鮮度・目視確認・加熱・冷凍です
  3. 胃(腸)アニサキス症の主な症状は食後の腹痛・吐き気など
  4. アニサキスアレルギーの存在も頭の片隅に
  5. 症状が現れた場合はすみやかに消化器科などを受診しましょう

当店和田珍味では島根沖や山口下関で獲れた新鮮な魚を専門スタッフが手作業で丁寧に加工して販売しております。
正しく保存・調理していただければ、食中毒の危険は限りなく低いものしかございませんので、安心してお求めいただければと思います。

当店和田珍味では美味しくそして安全にお召し上がりいただくために「食べ方のしおり」を同封しております。